滋賀・琵琶湖の西、森の中にたたずむオーベルジュメソン。今年で25年目を迎える、有限会社森の生活が営む宿です。もともとの建物は、アメリカ人の創業者が北米から資材と職人を呼び寄せて建てたもの。日本の宿にはない木のぬくもりに包まれた空間で、掲げるコンセプトは「何もしない贅沢」。その“いちばんいい過ごし方”を、オーナーの渡辺さんに伺いました。

まず、この宿の「いちばんいい過ごし方」を教えてください。

できればチェックイン開始時間の15時に来ていただいて、あとはもう、うちでゆっくりしてもらうのがいちばんだと思っています。
もともとこの周辺には大きな観光地がなくて、「ここだけで滞在が完結できる」ことを目指してきました。人気のライブラリーもそのために作ったものです。

連泊していただくと、真ん中の一日が何の予定もなく、まるまるゆっくり過ごせる。それがいちばんのおすすめですね。ただ最近は、この地域の“ゆっくり流れる時間”に惹かれて移住してくる方が増えていて、歩いていける範囲にカフェやコーヒーの焙煎所、ギャラリーなどのお店も増えてきました。周辺のマップは公式サイトからダウンロードできるので、早い時間から来て、森全体を楽しみ尽くすのもいいと思います。
「いちばんいい部屋」はどこでしょう。

この春オープンしたばかりの「レジデンス」です。床面積がいちばん広くて、片側の全面が森に向かって開けている。“森の中の宿”をいちばん感じていただけるのは、間違いなくこの部屋です。最大8名まで泊まれるので、三世代でのご利用にも向いています。
ただ、本好きな方にいちばんおすすめしたいのは、実はいちばんコンパクトな「スーペリア」なんです。

前の冬にリニューアルして、人気のライブラリーの“分室”のような位置づけで、部屋の中に本棚を作りました。もともと「何もしない贅沢を味わう、籠れる宿」がコンセプトなのですが、この部屋なら、その部屋だけでこもることもできる。しかも本館の中で唯一ライブラリーに繋がっているお部屋なので、夜、本館が閉まってライブラリーが使えなくなったあとも、こっそり降りてきて新しい本を取りに来られるお客様もいらっしゃるみたいですね。
家具や内装のこだわりが印象的です。

家族経営くらいの規模だからこそ、一つひとつの家具や内装にこだわれるのかなと思っています。大きな資本のところだとインテリアデザイナーさんが入られたりしますが、うちは人の手で一つずつ選んでいる。
そのぬくもりは、なかなか他にはないかもしれません。もともとの建物が、日本のデザインではない北米の造りなので、そこに合う家具を日本の設計士さんにお願いするのが難しくて。最近は、ある程度自分たちで方向性を決めて作っています。
足りない部分もあると思いますが、そこに温かさを感じていただけたら嬉しいです。
常連さんだけが知っている楽しみ方はありますか。
うちは一部のお部屋にダイニングスペースがあって、お部屋食ができるんです。

常連のお客様は、早いうちにお風呂に入ってしまって、完全にオフモードで、お部屋着のまま夕食を迎えられる方が多いですね。すごくリラックスされていて、いい過ごし方をされているなといつも思います。
あとは、非公開というわけではないのですが、公式サイトからご予約いただくと「おつまみセット」をオーダーできるようになっていて。ディナーでボトルのワインを飲み切れなかったお客様も、お部屋でさらにゆっくり、美味しい時間を延長していただけるのかなと思います。

スタッフだけが知っている、とっておきの風景は。
うちの施設のことではないのですが……車で5分ほどのところに琵琶湖があります。夏は湖水浴でたくさんの人が集まって、今年は海外の方も多くてすごく賑やかなんです。でも私が個人的に好きなのは、実は冬の琵琶湖なんです。

お客さんが本当に全然いなくて、とても静かで、空気が澄んでいて。散歩しているだけで、だんだん体があたたかくなって気持ちよくなってくる。コーヒー(私はカフェオレなんですけど(笑))を持っていって、座って、波が揺れるのを見ている。
そんな時間も、うちの“ゆっくりしてもらう時間”の延長として、いいのかなと思っています。
雨の日だからこその過ごし方はありますか。

今年の6月・7月に「梅雨の読書プラン」というのをやっていて、すごく好評でした。雨だし、出かけるのもちょっと億劫だからこそ、その時間を思い切って読書にあててしまおう、というプランです。

レイトチェックアウトにして、地元の作家さんが作られたしおりをお付けして。雨の景色って、中から見ていると森がさらに生き生きとして、すごく綺麗なんです。その景色を眺めながら、ゆっくり本を読んでいただく。おすすめの過ごし方の一つですね。
どんなお客様に来てほしいですか。これから力を入れたいことは。
今は、子育てが落ち着いて「二人で旅行しよう」という40代から60代のご夫婦がいちばん多いです。そのご夫婦が「すごく良かったよ」と言ってくださって、今度はお子さんの家族やお孫さんと一緒に来てくださる。
最初は二人だったのが、次は三人、四人になっている。前はお腹が大きかったお嫁さんが、今度は赤ちゃんと一緒に来てくださったり。そういう世代のつながりが、私たちとしてもいちばん嬉しいんです。
この春オープンした「レジデンス」は8名まで泊まれるので、これからは三世代で一部屋にゆっくり、というご利用がもっと増えるといいなと思っています。
私自身、子どもが生まれてから、絵本をライブラリーに置いたり、離乳食の温めをご案内したり、妊婦さんにデカフェをご用意したり——妊娠中から子育て世代の方に向けた、細やかなサービスができるようになってきました。ホテルの支配人は男性が多くて、なかなかそこまで気が回らないことも多いと思うので、そこは経験したからこそできることかなと思っています。
この仕事で、いちばん嬉しかった瞬間は。
各お部屋にノートを置いていて、お客様が感想を書いてくださるんです。そこに「また来たい」という言葉が入っていると、やっぱりそれがいちばん嬉しいですね。
1ページびっしり書いてくださったり、素敵なスケッチを入れてくださったり。書いてくださったら、その日のうちに必ず社内の全体LINEで共有して、みんなが見られるようにしています。
お料理が褒められたらシェフが嬉しいし、綺麗なお部屋でしたと言っていただけたらクリーニングのスタッフが嬉しい。みんなのモチベーションになっているみたいです。
宿として、いちばん大事にしていることは。
やっぱり、人と人としてちゃんと接することですね。小さな規模だからこそ、「このお客様はこのお部屋の方だ」と基本的に紐づけられる。
だから細やかな対応ができるんです。足が少し悪そうだから、決まっていた席より入り口の近くにしてあげよう、とか。
小さなお子さんがいらっしゃったら退屈しそうだから、絵本を持っていってあげよう、とか。一組一組、一人ひとりに合わせて形を変えて対応できる。
リピーターのお客様も多いので、以前どんなドリンクを召し上がったか、どんなお話を伺ったかも、みんなで共有してディナーの前に確認したりしています。これからも大切にしていきたいところですね。
中の人のとっておき|オーベルジュメソン
- 一
本好きは、いちばんコンパクトな「スーペリア」へ部屋の中に本棚があり、本館で唯一ライブラリーに繋がる一室。夜、閉館後もこっそり本を取りに降りてこられる、こもるための部屋。
- 二
森と、その中の小さな店を楽しむなら移住者が開いたカフェ・焙煎所・ギャラリーが徒歩圏に点在。公式サイトから周辺マップを事前ダウンロードしておくのがおすすめ。
- 三
冬の琵琶湖を、独り占め車で5分。人のいない冬の湖畔は、静かで空気が澄んでいる。カフェオレ片手に散歩して波を眺める、“ゆっくり時間”の延長。
宿DATA
| 宿名 | オーベルジュメソン(運営:有限会社森の生活) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県大津市北比良1039-45 |
| 開業 | 2002年頃 |
| 客室 | 〔要確認〕室(レジデンス/スーペリア ほか) |
| 特徴 | 森の中のオーベルジュ/ライブラリー/お部屋食(一部客室) |
当サイトは予約サイトを介さず、宿の公式サイトへのご予約をご案内しています。手数料等はいただいていません。

